明治・大正・戰前期に福井経済を牽引した起業家や経済人の事績
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「織物王国福井」の政財界に君臨した実力者
松井 文太郎
 (まつい ぶんたろう)

  明治〜昭和初期の福井の政財界の最大の実力者、福井会議所副会頭・会頭、県織物組合副組長・組長として織物王国福井で中心的な役割を担っただけでなく、政治家としては福井市会、県会、国会で活躍し県内外に広くその名を知られた。
 大正期、昭和初期の会議所は、名実ともに松井派の「城」・「拠点」であったとされる。

 松井文太郎は、明治元年8月大野郡勝山長淵町で松井文吉の長男として生まれた。松井家は代々商業を営み、父文吉は郡会議員や県会議員を歴任、勝山町長に推された商家である。
 明治19年に福井師範を卒業、同20年7月勝山市成器小学校の訓導になるも25年8月に退職して家業に従事し、福井に進出し生糸販売店を開いた。その後明治29年の勝山大火を機に、福井市宝永中町に住居を定めた。
 
 松井が繊維業者として飛躍するきっかけとなったのは、明治32年11月にフランスのパリ万国博に福井県出品者総代として参加し、このあと農商務省の嘱託として欧米諸国の絹織物の実情を視察したことである。
 松井にとって、パリ万国博で織物や物産の数々を実際に見聞し、さらにその後の先進国の織物産地視察は印象的なものであった。明治33年10月に帰国するが、この視察を通じ松井は力織機時代の訪れを痛感、帰国後間もなく力織機50台を据えた最新鋭の織布工場を創設したのである。
 また帰国早々、県織物同業組合の副組長に当選、大正5年2月には内田清に代わって組合長に選ばれ、業界の中でもリーダーシップを発揮しはじめる。

 松井は昭和5年に織物同業組合の組合長を退任するまで連続4回にわたり再選されるが、この間、繊維業界の発展に果たした役割は大きい。

 特に、織物市場の調査研究に熱心に取組み、大正期には、後に羽二重から人絹への移行に大きな役割を果す福井県工業試験場の岩下竜太郎場長を欧米や中国に派遣、自らも満州など市場開拓のための産業視察を行っている。大正8年10月の米国ワシントンで第1回国際労働会議に出席した際には、後に「人絹王」といわれる盟友の西野藤助を伴い、米国機業地の中心バタソンの実情視察や人絹織物工場の視察も行っている。松井はその後も暫くは絹織物産地として「人絹と絹との交織」には抵抗感を表明しているものの、竹下源治郎(福井織物組合検査所長)に人絹織物の研究を命じており、また後の人絹王西野が人絹織物に本格的に取り組む契機となっていくのである。


 その後も、竹下源次郎、木村武雄 (機業家、後に福井染色工業組合専務理事)、安本吉次郎 (機業家、福井精錬加工株式会社の社長の他多数の公職を務める)など業界要人や関係者をつぎつぎと海外に派遣し、市場動向の把握に努力している。
 羽二重から人絹への移行過程で、個々の先進的な機業家が果した役割は大きいが、松井が果たした役割も極めて大きいものがあった。その他福井紡績や福井染色をそれぞれ設立して社長を勤め、福井精練加工の合同問題への解決にあたり、取締役になったりもしている。

 また染色業者間の競争激化で品質が問題となると安本吉次郎や酒井伊四郎らと協議し福井県輸出織物染色工業組合を創設、また全国の染色組合を統合して、日本輸出織物染色工業組合連合会を結成するように働きかけ、松井が理事長に就任して業界の発展に努めた。 大正12年には日本輸出絹同業組合連合会の副組長、同じ年に日本輸出綿織物同業組合の副組長にそれぞれ就任している。

 松井は実業家として活躍する一方で、政治家としての活躍も目覚ましいものがあった。若くして伊藤博文の知遇を得て、明治33年の立憲政友会創立以来党員となって県支部の活動に参加。
 県会議員時代には市会議員も兼ねて県立工業学校・福井高等工業学校の設置に力を注ぎ、衆議院議員には大正6年4月、初めて当選(合計3回当選)をしている。
 その後、松井は武藤山治主宰の実業同志会に入り、党の役職としては、党総務・党本部会計監督として中央でも要職にあり、党福井県支部長もつとめた。
 世界初となる人絹取引所の福井開設にあたっては、松井の政治力も大きかったのである。
 
 松井の拠点といわれた商工会議所との関係は、明治36年に議員(副会頭)となってから、大正15年会頭に就任、現職会頭のまま昭和8年に死去するまで30年余に及ぶ。会議所へ出向くときは、いつも羽織はかま姿で、堂々たる態度であったと伝わる。
 福井が生んだ大物業界人・政治家は、昭和8年9月65才で死去した。 

 

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